2009年03月09日

人であふれた駐車場

私は大学を卒業後、就職した会社をたった一日で辞めました
何のために働くのか どうしても分からなかったのです
その答えを見つけるために自分で会社をはじめました
わからないながらも必死で働きましたが何かがうまくいきません
いつも中途半端で本気になれない自分がいました
夢を持つことができないまま、ただ毎日を過ごしていました
当時、私は事務所のあるところまで毎日車で通っていました
近くの駐車場には六十を過ぎたくらいの管理人のおじさんがいました
「おはようございます!今日も元気でいい一日ですね」
おじさんはいつも明るい笑顔で、年齢に似合わずシャキシャキと仕事をこなしています
ある日、駐車場に着いたら外はひどい土砂降りになっていました
困ったなぁと車から降りられずにいると、おじさんが走ってきました
「傘 わすれたんじゃない?コレ持っていきなよ」
「でもそれっておじさんの傘でしょ?」
「私の事は気にしなくていいんですよ」
おじさんはいつもこんな調子で お客の事ばかり考えてくれる人でした
駐車場は満車になることも多く おじさんはいつも看板の前で謝っていました
「満車です 申し訳ありません」
「やっと見つけたのに 困るんだよ!」
中には文句を言う人までいます
「本当に申し訳ありません・・・」
おじさんはいつも車が見えなくなるまで 少し薄くなった白髪頭を下げ続けていました
ある日 いつもと同じように車を止めようとした時
おじさんの笑顔がないことに気がつきました
「じつは今週いっぱいでこの仕事を辞めることになったんです」
「えっ、どうしてですか?」
「妻が肺を患っていて 空気のきれいな田舎で二人でのんびり暮らすことにしました」
「コレまで本当にいろいろお世話になりました」
そう言っておじさんは深々と頭を下げました
「お世話になったのはこちらのほうですよ・・・」
私は何ともいえない寂しさをおぼえました
今日が最後と言うその日 私はおじさんへのちょっとした感謝の気持ちで手土産を持っていきました
そして駐車場に着いた時 信じられない光景を目にしたんです
小さなプレハブの管理人室の窓からは中がまったく見えません 色とりどりの花束がたくさんつみあげられていたからです
ドアの横には1メーター以上の高さになるほどおみやげが積み重ねられています
たくさんの花束とプレゼントに飾られて管理人室はまるでおとぎの国のように見えます
駐車場の中は沢山の人でごった返し あちこちから声が聞こえてきます
「おじさん いつも傘を貸してくれてありがとう!」
「あの時 重い荷物を運んでくれて とても助かりました!」
「おじさんに 挨拶の大切さを教えてもらいました」
人ごみの中心には笑顔のおじさんがいました
みんなが次々とおじさんと写真を撮っています
おじさんと握手をしてハンカチで目を覆っている人もいます
おじさんは一人ひとりと目を合わせ何度も何度も頷いていました
私は列の最後に並んでおじさんと話す機会を待ちました
「おじさんには本当に感謝しています 毎朝気持ちよく仕事に取り掛かることができました」
「いえいえ 私は何もしていませんよ 私に出来ることは挨拶をすることと謝ることくらいです」
「でも私はいつも 自分がやっている仕事を楽しみたい そう思っているだけなんです」
仕事の最後の日 自分がこれまでどのように仕事に関ってきたのかを周りの人が教えてくれる
つまらない仕事なんか無い 仕事に関る人の姿勢が仕事を面白くしたり、つまらなくしたりするんだ
私はおじさんからそんな事を学びました
働くすべての人が働くことの本当の意味に気づき輝いた人生を送るきっかけになりますように・・・


我らが悪友たちにこの文章を送ります

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